東京高等裁判所 昭和27年(ネ)22号 判決
控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、「(一) 昭和二十三年九月二十九日被控訴人主張のような抵当権設定契約の締結されたことを認める。(二) 原審において、訴外臼井克郎(連帯保証人)が被控訴人に本件債務の元本の弁済として金十万円を支払つたと主張したが、これを金六万円と訂正する。(三) 控訴人が被控訴人に本件債務の元本の弁済として支払つた金八万円の明細は次のとおりである。(イ)昭和二十四年一月三十一日金二万円、(ロ)同年三月二十三日金二万円、(ハ)同年五月二十五日金二万円、(ニ)同年六月三日金二万円。(四) 利息制限法により、被控訴人が本件において月一割の利息を支払うことを求め得ない以上、右利息債権をそのまま月一割として、これが担保のための抵当権の設定登記を求め得ない。」と陳述し、被控訴代理人において、「控訴代理人主張(二)(三)の事実を否認する。」と述べた外、原判決事実摘示記載(原判決添附目録を含む)のとおりであるから、これを引用する。
<立証省略>
三、理 由
控訴人が、訴外大野米八、臼井克郎及び臼井恭生保証の下に、被控訴人から昭和二十三年九月二十九日金二十万円を弁済期限貸付の日から三ケ月、利息月一割の約束で借り受け、同日右債務の担保として原判決添附目録記載の控訴人所有の建物に抵当権を設定したことは、当事者間に争のないところである。
控訴人は、(一)被控訴人は控訴人に対し昭和二十四年一月右消費貸借より生ずる利息支払債務を免除した。(二)右消費貸借の元本支払債務の弁済として、被控訴人に対し、控訴人は金八万円、保証人大野米八は金五万円、保証人臼井克郎は金六万円を支払つたと主張しているけれども、本件一切の証拠によつても右主張を認め難い。かえつて、原審証人臼井克郎、当審証人大野米八の証言によれば、本件消費貸借成立後臼井克郎は金六万円、大野米八が金四万円をそれぞれ被控訴人に交付したことはあるが、右はいずれも本件消費貸借債務の弁済として交付したものではなかつたことを認めることができる。当審における控訴人本人尋問の結果によつて真正に成立したと認められる乙第二号証によつても被控訴人の自認する本件消費貸借に基く昭和二十四年三月末日までの利息相当の遅延損害金の支払がなされた以外に本件債務についての弁済があつたことは認め難い。原審及び当審における控訴人(被告)本人尋問の結果中右認定に反する部分は信用できない。よつて、控訴人は被控訴人に対し前段認定の消費貸借に基き元金二十万円及びこれに対する昭和二十四年四月一日以降支払ずみまで利息制限法所定の範囲内に引き直した年一割の利息相当の遅延損害金を支払う義務あるものというべきである。
次に抵当権設定登記手続を為すべきことを求める被控訴人の請求につき案ずるに、控訴人は利息制限法の制限範囲を超える利息債権については被担保債権としての登記を求め得ないと主張しているけれども、抵当権の被担保債権はそれが無効のものでない限り抵当権設定義務者は、これが登記を拒み得ないものであつて、現下の情勢においては月一割の利率の利息支払契約は、利息制限法の制限範囲を超過するというだけの理由で、これを公序良俗に反する無効の法律行為といい得ないから、直ちにこれを無効の債権として登記を拒むことができないことはいうまでもない。また、利息制限法は、その制限外の利息を裁判上請求し得ないとするだけであつて、制限外利息支払契約に基く利息債権を被担保債権として登記することを不可とするものではない。それ故控訴人は、前段認定の抵当権設定契約に基き被控訴人のため原判決添附目録記載の建物につき昭和二十三年九月二十九日の金銭消費貸借契約に基く元金二十万円、弁済期同年十二月二十九日利息月一割の債権を担保するため抵当権設定登記手続をする義務あるものというべきである。
よつて右の限度において被控訴人の請求を認容した原判決は正当であつて本件控訴は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十五条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 大江保直 岡崎隆 猪俣幸一)